東京大学が2026年度、2年続けて最終赤字になる見通しであることが明らかになった。2004年の国立大学法人化以降、2年連続の赤字は初めてである。
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東京大学が2026年度、2年続けて最終赤字になる見通しであることが明らかになった。2004年の国立大学法人化以降、2年連続の赤字は初めてである。繰越金は数年で尽きる見込みで、このままなら研究者の削減を含む規模の縮小が避けられないという。日本で最も恵まれた大学がこの状態にあるという事実の意味を、軽く見るべきではない。
背景にあるのは、基盤的経費である運営費交付金の長期的な減少だ。2026年度予算案では1兆971億円が計上され、9年ぶりに前年度から増額された。それでも法人化した2004年度と比べれば1445億円少ない。その間に人件費も光熱費も上がり、円安で輸入する実験機器や試薬の値段は跳ね上がった。額面が横ばいでも、実際に買えるものは大きく減っている。
私は、基盤的経費を公費で回復させるべきだと考える。
理由は、研究という営みの性質にある。何の役に立つかは、着手した時点では分からない。青色発光ダイオードもiPS細胞も、始まりは応用の見通しのない基礎研究だった。国はこの20年、交付金を絞る代わりに競争的資金を増やしてきた。計画を出して審査を受け、採択されれば資金がつく仕組みである。だがこの方式で採択されるには、あらかじめ成果を予測できる計画でなければならない。研究者は審査に通るために、結果の見えている無難なテーマを選ぶようになる。短期的には効率的に見えて、長期的には最も高くつく選択である。
影響はすでに現れている。安定した任期なしのポストが減り、若手の多くは数年ごとに契約を更新する立場に置かれた。10年かかる問いに取り組める人がいなくなれば、10年後に実る研究もなくなる。注目度の高い論文の数で日本の国際的な順位は大きく後退したが、これは日本が減らしたというより、伸ばさずにいる間に他国が伸びた結果である。文部科学省の「科学技術指標2026」では、研究開発費の総額で中国が米国を抜いて首位に立ち、日本は3位に後退した。
大学が自ら稼ぐべきだ、という主張はもっともに聞こえる。海外の有力大学は寄付基金の運用益や産学連携で巨額の収入を得ており、日本の大学の経営努力が足りないという批判にも一理ある。だが米国の寄付文化は数十年の蓄積と税制優遇に支えられたもので、制度ごと移植できるものではない。授業料の引き上げという道は、教育機会の平等と正面から衝突する。何より、稼ぐ力を育てるにも人と時間が要る。産学連携の窓口も、寄付を募る体制も、それを担う職員を雇わなければ動かない。その原資を削りながら成果だけを求めることはできない。
もちろん、交付金を戻しさえすれば解決するとは考えていない。増額分が人件費と光熱費の穴埋めに消えるだけなら研究力は上がらないし、事務手続きの重さや学部を越えた資源の融通のしにくさは、予算とは別に大学が自ら解ける課題である。経営の改善は必要だ。だが、それに取りかかる余力まで、すでに削り取られている。まず土台を戻し、そのうえで使い方を問う。順序を逆にしてきたことが、この20年の失敗だった。
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