2026年8月、政府は「給付付き税額控除」の基本方針を閣議決定した。2027年4月から2年間、飲食料品にかかる消費税率を8%から1%に下げ、あわせて所得に応じた給付を中低所得の働く世帯に届ける。
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2026年8月、政府は「給付付き税額控除」の基本方針を閣議決定した。2027年4月から2年間、飲食料品にかかる消費税率を8%から1%に下げ、あわせて所得に応じた給付を中低所得の働く世帯に届ける。残る1%分のおよそ年6000億円を給付で返すことで、家計から見れば食料品の税は実質ゼロになるという設計である。
減税の効き目の速さは疑いようがない。申請も審査も要らず、実施の翌日から全国のレジで効く。給付には申請という関門があり、制度を知らなかった人や書類をそろえられない人には届かない。支援を最も必要とする層ほどこぼれ落ちやすいという指摘は、これまで何度も繰り返されてきた。それでも私は、この減税を物価高対策の中心に据えるべきではないと考える。
第一に、配る相手を選べない。食料品への軽減は、支出額で見れば高所得世帯のほうが多くの恩恵を受ける。食べる量そのものは所得ほど差がつかないが、質の高い食材を買う世帯ほど軽減される税額は大きくなるからだ。財務省の試算では、この減税による税収減は年およそ2.3兆円にのぼる。その全額が、支援の要否にかかわらず全世帯へ一律に配られることになる。同じ額を対象を絞って配れば、困窮世帯に届く額は何倍にもなる。
第二に、終わらせられない。2029年度に食料品の税率は8%へ戻る予定だが、いったん下がった価格に慣れた社会で、それは値上げとして受け止められる。選挙を控えた政権がその決断を実行できるとは考えにくい。時限措置として説明された減税が恒久的な減収に変わり、社会保障の財源が細る。そのつけを払うのは、いま保険料を納めている現役世代である。
給付付き税額控除にも弱点はある。誰にいくら配るかを決めるには世帯所得の正確な把握が要り、日本はそこに長く苦労してきた。執行の事務コストもかかる。だが所得の捕捉は、マイナンバーと預貯金口座の連携によって解決へ向かいつつある技術的な課題であり、時間をかければ精度は上がる。一方、いったん恒久化した減税を元に戻すことは、技術ではなく政治の問題であって、時間がたつほど難しくなる。
速さを買うために、配る相手を選ぶ力と、やめる自由の両方を手放す。それが今回の減税の代償である。つなぎとしての減税は最小限にとどめ、給付の仕組みを一日でも早く立ち上げることに資源を集中すべきだ。
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