1ドル160円まで進んだ円安は、家計には負担、産業には追い風という二つの顔を持ちます。円安の仕組みを解説する課題文を読んで、あなたの判断を書いてみましょう。
この文章を読んでから、自分の意見を書きます
1ドル160円。2022年の初めに115円ほどだった円は、4年あまりでおよそ4割も安くなった。この円安は、日本にとって悪いことなのだろうか。
まず、円安が起きる仕組みを整理したい。為替レートは通貨と通貨の交換比率であり、円を売ってドルを買う人が増えれば円安が進む。その最大の要因とされてきたのが、日本と米国の金利差である。米国の金利が日本より高ければ、ドルで運用したほうが有利になり、円を売る動きが強まる。日本銀行は2026年に政策金利を1%まで引き上げたが、米国との差はなお大きく、円を買い戻す力にはなりにくい。
構造的な要因もある。日本は長くモノの輸出で外貨を稼いできたが、生産拠点の海外移転が進み、貿易で稼ぐ力は細った。加えて近年は、クラウドサービスやネット広告、動画配信の利用料など、海外のIT企業へ支払う「デジタル赤字」が年数兆円の規模に膨らんでいる。スマホで動画を見て、サブスクの料金を払う。その日常の支払いの一部が、円を売る力として働いている。さらに、各国との物価の差まで織り込んだ円の実質的な購買力は、統計を取り始めてからの最低水準に沈み、ピークだった1995年のおよそ3分の1になった。円安は一時の変動ではなく、30年かけて進んだ日本経済の地力の変化を映している、という見方もできる。
家計への影響は数字になっている。野村総合研究所の試算では、2022年からの円安の積み重ねで、4人世帯の年間負担はおよそ4万7,000円増えた。輸入に頼る食料やエネルギーの値段が上がり、賃金の伸びが追いつかない間、家計の実質的な豊かさは目減りを続けた。
他方で、円安の恩恵もはっきりと存在する。輸出企業が海外で稼いだ利益は、円に換算すると膨らみ、株価を押し上げてきた。外国人から見れば日本は割安な国になり、2025年の訪日客は4,200万人を超えて過去最高を更新し、旅行消費は9兆円を超えた。観光地で働く人や輸出産業に関わる人にとって、円安は追い風である。
つまり円安は、どの立場で見るかによって、損にも得にもなる。輸入品を買う消費者としての自分と、日本の産業の中で稼ぐ働き手としての自分は、同じ円安から逆向きの影響を受けている。政府は過去最大規模の為替介入で円安を止めようとしてきたが、効果は長続きしていない。為替を動かす根本の要因が、金利差と経済の構造の側にあるからである。
円安は、日本にとって悪いことなのか。家計の負担という現実と、円安に支えられる産業という現実。その両方を踏まえて、あなたの考えを組み立ててほしい。
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