フランスで15歳未満のSNS禁止法が成立した一方、先行したオーストラリアでは大半の子どもが使い続けています。守られないルールに、意味はあるのでしょうか。
この文章を読んでから、自分の意見を書きます
2026年7月、フランスの議会は15歳未満のSNS利用を禁止する法律を、上院243対2、下院279対81という圧倒的多数で可決した。欧州で初めての法律であり、9月から施行される。
だが、この決定には奇妙な前提がある。同じ趣旨の規制を世界で初めて実施したオーストラリアでは、施行から3か月たっても、規制対象の10代の大半がSNSを使い続けていることが、すでに報告されていたのである。政府機関が4,000人を超える子どもと家族を追跡した調査では、対象のSNSを使う子どもは86%から81%へわずかに減っただけで、毎日使う子どもの割合はほとんど変わらなかった。医学誌に掲載された別の研究でも、16歳未満の約86%が利用を続けていた。年齢確認は自己申告が中心で、抜け道はいくらでもある。フランスの議員たちは、守られない可能性が高いと知り得る状況で、ほぼ全会一致でこの法律を通したことになる。
守られないルールを作ることに、意味はあるのだろうか。
意味がない、という立場には十分な根拠がある。守られない法律は、法そのものへの信頼を削る。「どうせ守られていない」が当たり前になれば、他のルールまで軽んじられていく。まじめに規制へ対応する事業者や家庭だけが不便を引き受け、抜け道を使う側が得をするなら、正直者が損をする構図さえ生まれる。
これに対して、法律の役割は行動の統制だけではない、という考え方がある。法哲学では、法には「社会として何を大切にするかを表明する」働きがあるとされ、法の表現的機能と呼ばれる。未成年のSNS利用を法で禁じることは、完全には守られなくても、子どもの時間と心を守ることは社会の責任だという規範を宣言する。その宣言が、親子でスマホの使い方を話し合うきっかけになり、事業者への圧力になり、時間をかけて社会の常識を変えていく。
日本にも参考になる実例がある。自転車のヘルメット着用は2023年に努力義務となったが、罰則はなく、当初の着用率は13.5%にすぎなかった。それが3年後には21.2%まで上がった。今も8割の人はかぶっていないと言えばそれまでだが、着用率は1.6倍になり、ヘルメット姿は珍しい光景ではなくなりつつある。ただし地域差は大きく、着用率が7割に達する県と1割に満たない府県が併存している。ルールが規範として根づくかどうかは、条文ではなく、それを受け止める社会の側にかかっているのだろう。
守られないルールでも、作る意味はあるのか。それとも、実効性を欠いたルールは、かえって害をなすのか。オーストラリアの数字とヘルメットの数字を手がかりに、あなたの考えを述べてほしい。
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