主張を伝える 環境

動物園で、えさを丸ごと与える様子を見せてよいか?

課題文

この文章を読んでから、自分の意見を書きます

毛皮や骨が付いたままの動物を、肉食動物に丸ごと与える。
屠体給餌(とたいきゅうじ)と呼ばれるこの方法が、日本の動物園にも広がっている。
私は、その様子を来園者に見せてよいと考える。
むしろ、見せるべきだ。

屠体給餌のねらいは、動物福祉の考え方の一つである「環境エンリッチメント」にある。
飼育下で足りない刺激を補い、その動物が本来持っている行動を引き出す工夫のことだ。
オーストラリアのサファリパークでは、オスのライオン3頭に9日ごとに丸ごとの屠体を与え、3か月にわたって行動を記録した研究が2026年に発表された。
屠体の日は食べている時間がふだんの約3倍に延び、引きはがしたり引っぱったりする動きが増えて、食後はよく休んだ。
争いが増えることもなかった。
3頭だけの予備的な結果ではあるが、食べることは栄養をとるだけの時間ではないとうかがわせる。
日本では2017年に大牟田市動物園が、捕獲された野生動物の屠体を与えて以来、各地の園で試みが続いている。
害獣として捕まえた命を、捨てずに生かす道でもある。

もちろん、反対の声もある。
小さな子どもには衝撃が強すぎる。
楽しみに来た来園者に、不快な思いをさせる。
2014年には、コペンハーゲン動物園が健康な若いキリンを殺処分し、子どもを含む観客の前で解体してライオンに与え、世界中から批判を浴びた。
動物の死を見せ物にしているという指摘は重い。

それでも、隠すことが答えだとは思わない。
キリンの件では、殺処分の前から助命を求める署名が集まっていた。
人々がまず反発したのは、健康な個体の命を絶つという判断だった。
見せることへの抵抗は、見せ方でやわらげられる。
実施する日時を前もって知らせて見るかどうかを選べるようにし、飼育員がなぜ丸ごと与えるのかを説明すればよい。
肉食動物は、ほかの動物を食べて生きている。
その当たり前を見えない場所に置いたまま、ライオンを眺めて帰るほうが、動物の姿をゆがめて伝えることになる。
動物園が動物本来の暮らしを伝える場所であるなら、えさの動物を丸ごと与える様子も、説明を添えて来園者に見せるべきである。

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