主張を伝える 歴史

便利になったのに、なぜ忙しくなるのか?

課題文

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洗濯は洗濯機が、掃除はロボットが、買い物はスマホが引き受けてくれる。技術の進歩は、私たちの手から多くの労働を取り除いてきた。それなのに、現代人の口ぐせは「忙しい」「時間がない」だ。これは考えてみれば奇妙なことである。

さらに奇妙な事実がある。人類学の調査によれば、狩猟採集で暮らす人々が食料の確保に使う時間は、1日わずか数時間だったと報告されている。残りの時間は、昼寝やおしゃべりに充てられていた。「原始の暮らしは生きるだけで精一杯」というイメージは、実際の調査によって覆されたのだ。農耕が始まり、産業が発達し、社会が「進歩」するほど、人間の労働時間はむしろ延びていったという指摘さえある。

なぜ、こんなことが起きるのか。一つの説明は、便利さが基準を引き上げるというものだ。洗濯が楽になれば、人はもっとひんぱんに洗濯するようになり、「清潔」の基準そのものが上がる。連絡が一瞬で届くようになれば、すぐに返事をするのが当たり前になる。節約されたはずの時間は、新しい仕事と新しい期待に、たちまち埋め尽くされる。

技術は確かに時間を生み出している。問題は、その時間がどこへ消えているかである。便利さを追いかけてきた私たちは、いったい何に追われているのだろうか。

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